
午前中、ミホナちゃんの取材へ直行。パン職人姿の彼女はとっても立派でほんとうに格好よかった。そして急な依頼だったのに、部外者の訪問を快く受け入れてくれた職人の方々のあたたかさに心打たれました。みんなボンジュール!とにっこり迎えてくれて、まさかお仕事中の作業場のあんなに隅々まで撮影させてもらえるなんて思っても見なかった。試作品の試食までさせてもらって、ミホナちゃんがどんなにすてきな職場で働いているか、肌で感じることができました。
と、こんなにきらきらと心洗われるような一日の始まりだったのに、自分の職場へ戻ってからはひどい有様で。トーキョーで働いていたときよりも忙しく、責任も重く、感じたことのない期待とプレッシャーがのしかかって、次々と新しい課題が降って来て、永遠に終わらなくて、息継ぎができなくて、そんな風に言いたくないのに感じのわるい物言いをしちゃって、それに落ち込んだりして、そんなことしてても仕事は片付かなくて、あぁ今すごい不細工な顔してるんだろうなって思ってたら日が暮れてしまった。どんなに忙しくてもトゲトゲしないのが特技だったのにな。ため息とかめったに出て来ないのにな。いつだってもうちょっと心に余裕があったのに。 仕事が忙しいときって、それで活き活きしたり弾みがついたりすることもたくさんあるのに、こういう風になぜか淋しくなっちゃうのって何なんだろう。しかも今までに経験のないこの切なさって。
夜、市民講座に行っても疲れてるって思ってるからか、全然みんなの言葉も聞き取れないし、眠気もおそってくる。今日は授業の半分も理解出来ないままで、先生とみんなが何がおかしくて笑ってるのかもどうでもいいやってなんだかあきらめ80%って感じの気分で、だんだん悲しくなって来た。いつだって言葉が思うように操れないのが悔しくて悔しくて、もどかしいのに、それに対してあきらめの気分になるっていよいよ後ろ向きなんだろうか。
電車での帰り道、窓に映る姿がなんだかほんとうに冴えなくて、好きで来たのに「ここで何してるんだろう」なんてよぎったり。 駅についてエレベーターに9人びっちり乗り込んで地上に向かう途中、あろうことかエレベーターが故障で停止。もう本当に散々な気分で心がぐったりと疲れた。
エレベーターはゆーーーっくり上に動いたかと思えば止まるし、かと思えば下がり始めるしで、結局は宙ぶらりんのままで、本当ならすごく危ないしこわい状況だったと思うんだけど。一緒に乗り合っていたフランス人たちは誰1人そう思ってないみたいで、「さっき地上がちょびっと見えた!」とか、「待ってる人のカバンが見えるよ!」とか、「パラシュートで降りてるみたいだ」とか「ZENの境地になろう」とか笑いながら好き勝手に言ってる。5分くらい過ぎたところでやっと非常ボタンを押すことに意見がまとまって、管理センターと繋がると、「今修理担当がそちらに向かっている」と。それにも「みんなで見たことない景色を今見てるんだよ!」なんて答えてて、わたしもだんだん可笑しくなって来た。修理の人が到着して、下の方から「あと5分くらいで降ろすから」と声がしても「こっちはみんなと自己紹介でもやってるからどうぞごゆっくり」なんて言ってた。ようやくエレベーターが動き出して、綿毛くらいゆっくりと降下し始めた時には「こんな風にエレベーターでそっと降りたことないだろう?すごいステキじゃないか!」の言葉にみんなそうだそうだ、と笑い合って、むしろ良い経験だったと言わんばかりの笑顔でさよならと言い合って降りた。
結局元来た通路を戻って、1人長いエスカレーターで地上へ上がりながら、なんだか急に泣けて来た。
エレベーター、故障してよかった。